「資産運用に興味はあるけれど、何から始めればいいのか分からない」という方は多いのではないでしょうか。銀行にお金を預けているだけでは、超低金利の現在、資産はほとんど増えません。それどころか、物価上昇(インフレ)が続けば、実質的な資産価値は目減りしてしまう可能性もあります。今回は、資産運用がまったくの初めてという方に向けて、始め方の基本をわかりやすく解説します。
なぜ今、資産運用が必要なのか
かつては銀行預金だけでも資産を増やすことができました。しかし、現在の預金金利は非常に低く、預けているだけではほとんど資産が増えません。さらに、物価が上昇する局面では、現金の価値そのものが実質的に目減りしてしまいます。
また、公的年金だけで老後の生活をまかなうことが難しくなってきているという現実もあります。こうした背景から、自分自身で資産を育てていく「資産運用」の重要性が高まっているのです。資産運用は一部の富裕層だけのものではなく、誰にとっても将来の選択肢を広げるための手段となっています。
資産運用を始める前に整えておきたい土台
資産運用を始める前に、まず整えておきたいのが「生活防衛資金」です。生活防衛資金とは、病気やケガ、失業などの不測の事態に備えて、すぐに引き出せる形で確保しておくお金のことを指します。一般的には、生活費の3ヶ月〜1年分程度を目安に、普通預金などすぐに使える形で確保しておくことが推奨されます。
この生活防衛資金があることで、万が一の際にも投資商品を慌てて売却する必要がなくなり、精神的な余裕を持って長期的な資産運用に取り組むことができます。まずは家計を見直し、生活防衛資金を確保することから始めましょう。
資産運用の主な種類を知る
資産運用にはさまざまな種類があります。それぞれの特徴を理解したうえで、自分に合った方法を選ぶことが大切です。
投資信託
投資信託は、多くの投資家から集めた資金を、運用の専門家がまとめて株式や債券などに投資する金融商品です。少額から始められ、一つの商品で複数の銘柄に分散投資できる点が大きな魅力です。初心者にとって始めやすい投資先の一つと言えるでしょう。
株式投資
企業の株式を購入し、値上がり益や配当金を狙う投資方法です。個別企業の業績や成長性を見極める必要があるため、投資信託に比べるとある程度の知識や情報収集が求められますが、大きなリターンを狙える可能性もあります。
債券投資
国や企業にお金を貸し、その利子を受け取る投資方法です。株式に比べて値動きが穏やかで、比較的リスクが低いとされています。安定志向の方や、資産の一部を守りながら運用したい方に向いています。
不動産投資
マンションやアパートなどの不動産を購入し、家賃収入や売却益を得る投資方法です。まとまった資金が必要になる場合が多いですが、近年はREIT(不動産投資信託)を通じて、少額から不動産に間接的に投資することも可能になっています。
初心者におすすめの制度を活用する
資産運用を始めるにあたって、ぜひ活用したいのが国の税制優遇制度です。
新NISA
新NISAは、投資で得た利益が非課税になる制度です。通常、投資の利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座内での取引であれば、この税金がかかりません。つみたて投資枠と成長投資枠があり、目的に応じて使い分けることができます。初心者がまず検討すべき制度の一つです。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは、自分で掛金を拠出し、自分で運用方法を選んで老後資金を準備する私的年金制度です。掛金が全額所得控除の対象となるため、所得税や住民税の負担を軽減できるという大きなメリットがあります。ただし、原則として60歳まで引き出せないという制約があるため、老後資金専用と割り切って活用するのがよいでしょう。
資産運用を始める具体的なステップ
ステップ1:目的と期間を明確にする
まずは「何のために」「いつまでに」資産を作りたいのかを明確にしましょう。老後資金なのか、教育資金なのか、住宅購入資金なのかによって、適した運用方法や期間は変わってきます。
ステップ2:証券口座を開設する
資産運用を始めるには、証券会社の口座開設が必要です。近年はネット証券であれば、スマートフォンから手軽に口座開設ができ、手数料も比較的安く抑えられる傾向にあります。NISA口座を同時に開設しておくとよいでしょう。
ステップ3:少額から積立投資を始める
いきなり大きな金額を投資するのではなく、まずは月々数千円〜1万円程度の少額から積立投資を始めることをおすすめします。積立投資は、購入タイミングを分散させることで、価格変動のリスクを抑える効果が期待できます。
ステップ4:定期的に見直しを行う
資産運用は一度始めたら終わりではなく、定期的に運用状況を確認し、必要に応じて見直しを行うことが大切です。ただし、日々の値動きに一喜一憂するのではなく、半年〜1年に一度程度の頻度で、長期的な視点から見直しを行うようにしましょう。
資産運用で気をつけたいポイント
資産運用にはリスクが伴うことを理解しておくことも重要です。「元本保証ではない」という点を常に意識し、余裕資金の範囲内で行うようにしましょう。生活に必要なお金まで投資に回してしまうと、いざという時に困ることになります。
また、「必ず儲かる」といった甘い言葉を用いる投資話には注意が必要です。高いリターンをうたう商品には、それに見合った高いリスクが伴うのが一般的です。信頼できる情報源から学び、自分自身で判断できる知識を身につけていくことが、長期的に資産を育てていくための土台となります。
資産運用にかかるコストにも目を向ける
資産運用を行ううえで、見落とされがちなのが「コスト」の存在です。投資信託には、購入時にかかる購入時手数料や、保有している間ずっとかかり続ける信託報酬(運用管理費用)などのコストがあります。特に信託報酬は、長期で保有すればするほど運用成果に大きな影響を与えるため、できるだけ低コストの商品を選ぶことが重要です。
近年は、購入時手数料が無料(ノーロード)で、信託報酬も低水準に抑えられたインデックスファンドが数多く登場しています。初心者の方は、まずこうした低コストの商品を中心に検討するとよいでしょう。証券会社のウェブサイトなどで、商品ごとの信託報酬を比較してみることをおすすめします。
分散投資という考え方を身につける
資産運用においてリスクを抑えるうえで欠かせないのが「分散投資」という考え方です。分散投資には、大きく分けて「資産の分散」「地域の分散」「時間の分散」の3つがあります。
資産の分散とは、株式や債券、不動産など、値動きの異なる複数の資産に投資先を分けることです。一つの資産価格が下落しても、他の資産でカバーできる可能性が高まります。地域の分散とは、日本国内だけでなく、米国や新興国など、複数の国や地域に投資先を分けることです。特定の国の経済状況に資産全体が左右されるリスクを軽減できます。
時間の分散とは、一度にまとまった金額を投資するのではなく、購入するタイミングを複数回に分けることです。毎月一定額を積み立てる「ドルコスト平均法」と呼ばれる手法を用いることで、価格が高いときには少なく、価格が安いときには多く購入することになり、平均購入単価を平準化する効果が期待できます。
よくある失敗パターンとその対処法
資産運用を始めたばかりの初心者が陥りやすい失敗として、値下がりした際に慌てて売却してしまう「狼狽売り」が挙げられます。市場は短期的に上下を繰り返すものであり、一時的な下落に動揺して売却してしまうと、その後の回復局面での恩恵を受けられなくなってしまいます。長期投資を前提とするのであれば、短期的な値動きに一喜一憂せず、当初決めた方針を維持することが大切です。
また、SNSやインターネット上の「儲かる」という情報に振り回され、次々と投資先を変更してしまう人も少なくありません。投資先を頻繁に変更すると、そのたびに手数料が発生し、かえって運用成果を悪化させる原因となります。一度方針を決めたら、余程の理由がない限り、長期的な視点でどっしりと構えることが成功への近道です。
まとめ
資産運用は、決して一部の人だけのものではなく、将来の選択肢を広げるために誰もが取り組める手段です。まずは生活防衛資金を確保したうえで、新NISAなどの税制優遇制度を活用しながら、少額の積立投資から始めてみましょう。
その際は、コストの低い商品を選ぶこと、資産・地域・時間を分散させること、そして短期的な値動きに動揺せず長期的な視点を持ち続けることを意識してください。焦らず、着実に知識と経験を積み重ねていくことが、資産形成への確かな近道となります。